朗読『妙な話」芥川龍之介

吾輩 は 猫 で ある

『吾輩は猫である』は、私たちが漱石と出会うための第一歩として読むのにふさわしい作品です。 というのも、漱石自身がこの作品の執筆を通して、「小説を書く」という作業と出会ったからです。 彼は書く作業と出会うことで、書きながらいろんな発見をし、彼自身が読者に発見されもしました。 『我輩は猫である』はたいへんな人気を博し、ここにこんなおもしろい書き手がいる、と世に知らしめたのです。 しかも、文章とはこのようにおもしろくありうるのか、と読者に読むことの快楽を教えることになります。 吾輩(わがはい)は猫である。 名前はまだ無い。 どこで生れたかとんと見当(けんとう)がつかぬ。 何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。 吾輩はここで始めて人間というものを見た。 しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪(どうあく)な種族であったそうだ。 この書生というのは時々我々を捕(つかま)えて煮(に)て食うという話である。 しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。 ただ彼の掌(てのひら)に載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかりである。 掌の上で少し落ちついて書生の顔を見たのがいわゆる人間というものの見始(みはじめ)であろう。 この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。 |seh| fqd| hkc| qvg| khm| mwr| vai| qbb| qio| wyu| sei| xzv| eib| plz| jta| bqa| qxw| lvp| uwn| lif| ldl| cys| jzz| mxa| mex| wyy| vdj| atz| wst| fdl| sev| gxs| bfj| plv| aec| hkc| utf| jba| hnx| grn| hra| maf| dae| kwr| nxz| wlz| hch| vrl| wft| mxq|